契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
「まあ、とっても怯えてたみたいだが? 一応こんな肩書きなんで良かったら見るけど? その胸に大事に抱えてる企画書」

「お手を煩わせてしまうんじゃないです?」
「時間あるから構わない。見てほしいなら来い」

 とりあえず、得物は出てこなかったので美冬はお願いすることにした。

 なにせ、進退がかかっているのだから!
 ──この人が苦手とかそんなことは言ってられないのよ!

 槙野はその場で受付に言って、副社長室に案内してくれた。
 イメージ通りのシンプルでモダンな内装で入ってすぐの応接セットのソファを美冬は勧められる。
 そこに美冬は座って槙野が書類を確認するのを見ていた。

 美冬の企画書を見ながら、槙野の眉間にぐっとシワの寄るのを美冬は見たのだ。

 怖い!
「悪くはない」
(悪くはない顔それなの!? 海に沈められるかと思ったんだけど!!)

「だから、顔に出てるっつーの」
 あきれたような顔で槙野に見られて、思わず自分の顔を抑えてしまう美冬だ。
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