契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
「こんなに可愛い方だったのなら、紹介して欲しかったのに。ご婚約されたとニュースリリース見ました。おめでとうございます」

「ありがとうございます」
 そう言って美冬は目の前の国東に頭を下げた。

「お相手がグローバル・キャピタル・パートナーズの槙野さんではとても敵わないからな。片倉社長はまた別格ですけど、僕らみたいな若手の経営者でアクティブな人は実は限られていて、非常に狭い世界なんです。その中でも槙野さんはおモテになるし、有名ですからね」
「そうなんですね」

 そんな気はしたけど。
 一見迫力のある見た目だけれど、顔立ちも整っていなくはないのだし、押しの強い感じが好み、という人にはたまらないだろう。

「噂をすれば、だな」
 槙野が足早に会場に入ってくるのが見えたのだ。
 美冬を見つけて、槙野が大股で近づいてくる。

「国東さん」
 その声は槙野の声だ。

 美冬はあれ?と思う。
 その声を聞いて、すごくすごく安心してしまったのだ。
(私、心細かったんだな)
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