契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 一気に言い切った槙野がふと見た美冬が真っ赤な顔をしていて、しかも照れていてとても可愛い。
 そして槙野は気づいた。

 綾奈が大騒ぎをするので、何となく会場の注目を集めていたのだけれど、槙野がそんなことを言うから会場からは拍手や口笛まで聞こえる大騒ぎになってしまっていたのだ。

 こ、こんな風に告白するつもりじゃなかったのに!
 ガーデンでいい雰囲気の中、指輪を……。もう、本当に思い通りにいかない!

 美冬はまだ赤い顔で、槙野のことを上目遣いでじっと見る。
「だって、落ち着かないとか言うし……」

「それは落ち着かないだろう。可愛すぎるんだお前は。好きな人の前で落ち着いていられるやつなんかいるかよ」
「え? 落ち着かないってそういう意味?」

 あちこちからヒューヒュー囃し立てる声やら、指笛の音やら聞こえる。
 もう槙野は腹を決めた。

「俺が結婚したいと思うのは美冬だけだ。大事にする。嫁に来てくれ」
 その場に片膝をついて、槙野は今日一日ポケットに入れていたケースに入った指輪を差し出した。

 今更、美冬は嫌とかダメとか言わないと思うのだが、それでも槙野の胸の鼓動は大きくなり今までにないくらい緊張した。
< 213 / 325 >

この作品をシェア

pagetop