契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 真っ赤になった美冬が槙野の肩をポンっ!と叩く。
「あからさまに言わないでよっ!」
「あからさまもくそも、その通りだろうが」

 槙野は腕を組んで、美冬に向かって首を傾げた。恥ずかしがって俯いている美冬の風情は本当に可愛いのだ。

「なるほどな。したことない美冬ちゃんにはその言葉さえハードルか。真っ赤になって可愛いな。で? 本当はしてくれようと思ったんだ?」
「なのに、あんなこと言うから……」

 今度こそ本当に堪えることなんてできなくて、槙野は思いきり美冬を抱きしめた。

 その抱かれ方はあの契約婚をすると言った時のことを美冬に思い起こさせる。
 それでも、美冬はあの時と今は全く気持ちが違うということを強く感じた。

「すげえ好き。だから甘えられたら、きっと強引にでも奪ってしまいそうだと思ったんだ。好き過ぎて、美冬の意思に反することはしたくねえって思ったんだよ。甘える美冬ってむちゃくちゃ可愛いからな」

 大きな身体で強く抱きしめられるだけでも安心するのに、大好きとか可愛いとかたくさん言われ過ぎて、もはや美冬はどうすればいいのか分からない。

「甘えちゃ、ダメ?」
「ダメなわけない。俺だけに甘えろ」
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