契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
「え? ちょ……ホントに?」
 確かに先程、家まで我慢できないとは言っていたけれど。

「内装は悪くないぞ。景色もな。雰囲気もとてもいい」
「なんで知ってるの」

 家からはさほど遠くない場所にあるホテルだ。宿泊に利用するとも思えない。
一体誰を連れ込んで……。

「そういう顔で見るなっ。俺が手掛けたうちの会社で出資してるホテルだっ」
「あ、そっか……」

「あのなあ、それは俺も30年以上生きてるわけだし、いろいろあったよ。でも俺が結果選んだのは美冬なんだ。それは信じてほしい」
「信じてるよ」

 美冬にだって分かっている。
 とても魅力もお金もある人だ。今まで何もなかったということはないだろう。

 槙野が一生懸命言い訳してくれるのが嬉しくて、つい意地悪したくなっただけなのだ。

「そのいろいろって綾奈さんのことも?」
「なんもねえわっ! お前はそこで大人しくしてろ」
面白いのでからかっていたら怒られて、美冬はロビーにある椅子に座らされてしまった。
「はいはいー」

 美冬をロビーに置いて、槙野はカウンターにチェックインしに行く。
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