契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 チェックインカウンターの女性が槙野に気付いて笑顔になった。
 にこにこと何か話している。

──そっかぁ……抱かれてしまうんだ。
 そう思うと緊張してきた美冬である。でもそれでも今日はするんだっと心に決めていた。

 ふと見るとチェックインカウンターに男性がいて槙野と立ち話をしていて、槙野が美冬を手招きしている。

 美冬は自分を指さし、ん?と首を傾げると、槙野はこくこく頷いていた。
 どうやら来い、ということのようだが。

「どうしたの?」
「おめでとうございます」

 カウンターの男性に言われて、槙野は非常にバツの悪そうな顔をしていた。

「さっきのアレ、SNSに上げられてる。おめでとうのタグ付きで身内に拡散されてた」

「当ホテルの支配人です。この度はおめでとうございます。いやー、うちでやって下さっても良かったのに」
「はー、もう勘弁してくれ」

 か……拡散とは……。
 自分がプロポーズされる場面が拡散されていると聞いて涙目になる美冬だ。

「もーっ、祐輔のバカっ!」
「俺だよっ」

「いやいや、好印象ですって。こうして見てもお似合いのお二人ですし、当ホテルも応援致しますよ」
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