契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
「それは……素敵だもん。つい見ちゃうよ。そのジャケット、オーダーでしょ?シルクだよね」
「スーツかよ……」

「それだけじゃなくて、脱いでる仕草がすごく……すごくドキドキしたのよ」
「ふぅん?」

 すりすりと指で美冬の頬を撫でていた槙野だけれど、その美冬の回答を聞いて、にっこり笑った。

「もっと、煽られろよ。ドキドキして、俺にされちゃうって考えて、それだけで頭いっぱいになれよ」

 あ……あたま爆発しそうっ!なにその色気っ!
 ゆるっと美冬の唇に指で触れて、にやっと笑うと槙野は立ってバスルームに向かった。

 美冬は枕にうつ伏せる。
──し……死ぬ。ドキドキして。されちゃう……なんて考えたら、心臓爆発して死ぬ。



 少し前の杉村との会話を美冬は思い出していた。
 それはあの槙野のご立派に触れて、泣いてしまった後のことだ。

「男の人のって……あんなになるものなのね」
「ナニの話ですか? ついにされたんですね。おめでとうございます。赤飯とか炊きます?」
< 230 / 325 >

この作品をシェア

pagetop