契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 杉村は相変わらず表情も変えずに淡々と、そんなことを言った。

「要らないわよっ。結局しなかったんだし」

「しな……かった? 槙野さんのソレがそうなってるところを確認されてるんですよね?」
 あんなになる、とは屹立しているところを見た、ということなのではないだろうか。

「うん……」
 美冬は手の平をじっと見るのをやめてほしい。その大きさを反芻しているのが分かるから。
 ということは確実に固く大きくなっている状態を確認した、ということだろう。

「まさか、しな……かったんですか?」
「だって、入らないよ。あんなの……」

 絶対入んない……とかごにょごにょ美冬は言っている。おそらくは完全なる臨戦状態だったのだろうに美冬のことだから、無理とかなんとか大騒ぎしたのではないだろうか。

 そう思うと、杉村は槙野が気の毒になってきた。それでも無理強いはせずに引いたところに好感が持てる。

「美冬さん、しようって思ったんですよね?」
「そうよっ! いいところまでいったのよ」

 ますます槙野がかわいそうだ。
「入ります」
 キリッと杉村は言った。

「え?」
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