契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
「私もミルヴェイユが大好きなんです。槙野は最初私に『シナジー効果』はなんだと聞きました。お互いウィンウィンになることです。そうなるように頑張りましょう、一緒に」

「椿さん……」
 綾奈の目が潤んでいた。美冬はにっこり笑う。
「綾奈さんは感受性がとても豊かなんですね。素敵だと思いますよ」

 そうして、どうしても気になって聞いてみたかったことを尋ねる。
「差し出がましいようなんですけど、その後国東さんとはいかがです?」

 綾奈は悲しそうな顔で首を横に振った。
「私はダメなんです……。もう、そういうことは諦めようと思います。きっと素敵な人は私なんかお相手はしてくださらないから」

 少し前まで美冬だってそうだったのだ。
「綾奈さん! 諦めてはいけません! きっと素敵な出会いがありますから!」
 綾奈は顔を上げる。

「そうかしら……」
「そうですとも!」
 根拠はないけど!

「なんだか、槙野さんが美冬さんに惹かれたのも分かる気が致します。美冬さんはお話していると何だか元気をいただける方なんですね」
 そう言って綾奈は美冬に微笑む。美冬も笑顔を返した。

「能天気だとよく言われますけど」
「いいえ。元気出ました。私、頑張りますわ!」
「うんうんっ! 応援してますね!」

 ──あれ?えーと、これでいいんだっけ?
 うん!でも綾奈さんも笑顔になったし、多分これでいい!

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