契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
「好きにしていいなんて言われることはないからね、しかも糸目は付けないなんてデザイナーとしては嬉しすぎる案件だな。どんな高いマテリアルでもいいんだよな。愛されてるよ。自信持っていいんじゃない? それにちょっとくらいは付き合ってあげたら?」

 ──ちょっとくらい?あれってちょっとくらいなのかしら?

 一方の石丸はフランス製のレースとかいいよなぁとなんだか嬉しそうだ。
 デザインするドレスのお金に糸目を付けなくていい、というのがよほど楽しいことらしい。

「うん、一日しか着ないからね?」
「せっかくなんでいいやつ作ろうな!」
 人の話聞いてる?

 せっかくの機会なので、美冬は石丸に聞いてみることにした。
「ねえ? 諒は今はいいなあって思う人はいないの?」

 いつものように石丸はそういう質問をすると、すん……とした顔になる。

「美冬さあ、ちょっと前までそういうの言われるのすごく嫌がっていたじゃない? 自分が結婚するとなったらそういう質問も平気なわけ?」

「そういう訳ではないんだけど」
「他人に余計なお世話してないで、自分のこと考えなよ」

 石丸はため息をついた。そうして、来客用のソファから立ち上がる。
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