契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
「今日は気分が乗らない。デザイン室に戻る。美冬も後でおいでよ。コラボ商品が届いているから」

 デザイナーの繊細な神経を逆撫でしてしまったのかもしれない。
「うん。ごめんね」

「美冬、僕は美冬のことがすごく好きだ」
「え?」
 美冬はどきんとした。まさに槙野に指摘されたところだったからだ。

「誤解しないでね。それは恋愛感情ではなくて、そうだな……妹のようにも兄のようにも思う」
 あ、あに!?そこは姉であって欲しいんだけど!

「美冬の気風の良いところは姉ってより兄貴を感じることがあるんだよね。美冬がずっと恋愛できなかったのもそれだと思うよ。本当はそれには気づいてた。美冬より男前な男性なんてあまりいないよ」

免許皆伝、でしょーか??
 男前だと思われてたのか……。

「女の子っぽさよりも、しっかりしているところの方が目につくし、その明るさに負けないような人もなかなかいない。槙野さんはそれを超えられる稀有な人だ」

 確かに頼り甲斐、という点では槙野は美冬なんてはるかに超えている。
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