契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
「綺麗なものを見れば綺麗だと思う。美冬みたいに明るい人はいいなあとも。でも恋愛感情は生まれない。むしろ教えて欲しいよ。僕並みに恋愛になんて興味がなかったはずの美冬がどうして槙野さんをいいと思ったのか」

 王子様のような麗しい見た目なのに、石丸は恋愛が分からないというのだ。

 ──そうか……分からないから恋愛してなかったんだ。

 選り好みしているわけではなかったと知って、美冬はなんとも言えない気持ちになった。

「最初は怖かったの……」
 部屋を出ようとしていた石丸は足を止めた。そうしてゆっくり美冬を振り返る。

「祐輔って顔が怖いじゃない? それに諒だって知っているでしょ? 最初、シナジー効果が見えない! とか怖い顔して腕とか組んじゃって感じ悪かったわ」

 それを聞いて足を止めた石丸はふっと笑った。
「そうだったね」

「でも、面倒見良くて、強くて、優しくて……いろんなところを知っていったら、一緒にいたいなって思ったのよ。お互いに事情はあったにしても」
「ちょっと待って美冬。事情ってどういうこと?」
 ん?あれ?口が滑った?
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