契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 しかしだからといって、もちろんやっていいことではない。

 責めたい気持ちもあるけれど、綾奈が悪いわけでもない。

「商品はすぐに店頭から撤去しています。他にもないか、今確認を進めています」
「分か……りました」
 頭が働かない。

「木崎社長は?」
「報告しました。今、うちは『グローバル・キャピタル・パートナーズ』の資本が入っています。そのためGCP(グローバル・キャピタル・パートナーズ)にも相談中です」

「あ……今回のコラボについても、そうだっけ?GCPに確認した方がいいのかな」

 その時、秘書がドアをノックする。
「社長、お客様です。槙野副社長と木崎社長です」
「ちょうど良かったわ。入っていただいて」

 秘書の案内で社長室に入ってきたのは、真っ青な顔の木崎社長とその後ろに堂々たる雰囲気の槙野だった。

 槙野の姿を見ただけで、美冬は力が抜けそうなのだが、グッと堪える。ここでふにゃふにゃしているわけにはいかない。

「椿さん、事情は聞きました」
 低くてキリッとした槙野の声。
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