契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 抱きしめられたらこんなにも安心してしまう。
 もちろん槙野が助けてくれたことなど充分に分かっていた。

 一人ならばここまで、きちんと解決に導くことは出来なかったかもしれないし、対応が完了出来たのも今後のこともほとんど槙野が誘導してくれたから判断出来たようなものだ。

 それでも、今回の件は美冬が始めた企画だったし、トラブルがあれは美冬が対応しなければならなかった。

 それは今までの雇われていただけの、祖父の庇護の元に経営していただけでは分からないことだ。

 とても、怖かった。
 ショックでもあったし、これで企画が潰れてしまったらどうしようと思うと震えが止まらなかったのも事実なのだ。

 それを理解してくれて、頑張ったな、と認めてくれるのが美冬のパートナーなのだ。

「祐輔、ありがとう……」
「ん? 当たり前だろ?」
「怖かったの」
「そうだな。お前は頑張ったよ」

 抱きしめて、甘やかされることがこんなにも心地良いことだとは知らなかった。
 そして、一人ではないことがこんなに心強いものだとも知らなかったのだ。
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