契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
「今まで、その名前を俺は好きじゃありませんでした。目付きが悪いことやすぐに噛み付くと思われているのかと気分は良くなかった。けど、明日からはその名前も悪くない、と思えるような気がします。確かに俺は俺の一生をかけて、美冬が好きだ」

「群れを率いて番を愛する。君は黒狼の名に相応しいのでは?」
「ではその名を誇りに思えるよう、今後も尽力します」

「そうしなさい」
 祖父はとてもとても満足そうだった。
 改めて、こんな二人の姿を確認したかったのだろうか。

 美冬は祖父と槙野の言葉を思い返す。
『一生に一匹しか番わない狼』

 それに対して槙野は
『俺は俺の一生をかけて美冬が好きだ』
と言ってくれたのだ。

 槙野がとても好きだ、と美冬も改めて思う。
 美冬がちらりと槙野を見ると、槙野はその鋭い目を柔らかく微笑ませて美冬を見ていたのだ。

 結局、飲んでいたので、槙野の車は代行を頼んで、二人はタクシーで帰った。
 その間も、槙野はずっと美冬の手を離さない。

「なんか……」
「なんだ?」
「すごく、ドキドキしてきたんだけど」
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