契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 タクシーの中でそう言うと、槙野は婉然と笑った。
「それは正しいな。これで済む訳はないからな」

 ──ん?済む訳ない?済む訳ないって……。

 引き摺られるように玄関の中に入った瞬間だ。
 強く抱き締められて、貪るようにキスをされた。

 唇を重ねるなんてものじゃない。
 まるで食べられてしまうかのように深く舌が絡み合うようなキスだ。

「……っん、祐輔……っ、ここ、玄関……」
「ああ。大きい声、出すなよ?」
 そこ!?絶対違う!!

「こんな綺麗な美冬の姿を見せられて、何も出来ずにお預けされていたんだからな」
「お預け……って……ぁんっ」
 軽く鎖骨に歯を当てられた。

 背中のファスナーが半分程下ろされてそこから入った手が胸元を探り当てる。

「なあ? その綺麗な姿を見て、俺が何を考えていたか分かるか?」
 な……なにっ?

 感じるところを甘くひっかくようにされたり、きゅっと軽く摘まれたりして、頭なんて働いていない。
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