契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした

4.悪魔?小悪魔?

 駅前の大きなビルのそのフレンチレストランは、美冬も数回利用したことがあった。

 エレベーターを降りるとガラス張りの向こうに見事な夜景が見えて、店の入り口には綺麗なガラスで店舗の名前が彩られている。

 入るとすぐレセプションがにこやかに対応してくれた。
「いらっしゃいませ、ご予約のお名前をお伺いいたします」

 美冬が名前を名乗るとすでに槙野は来ていると個室に案内された。

 先に来て席についていた槙野は相も変わらず高級そうなスーツに身を包んでいて、案内されてきた美冬を見て目を軽く見開いている。

 いつもはシンプルなスーツ姿が多い美冬がピンクのワンピースを着ているからだろう。

 そうして槙野はふん、と笑った。
 またなにか小馬鹿にされたような気がする!

「ふうん、童顔で好みじゃないと思ったが悪くはないな」

(あ、好みじゃないのね)
 美冬の顔は好みではないけれど、服は悪くないということだろうか。普通にへこむ。

「好みじゃないとか言っちゃうんですね」
「隠し事しても仕方ないしな。それに悪くないと言っただろう」

 ギャルソンが椅子を引くのに、美冬は「ありがとう」と言って腰を掛ける。
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