契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした

5.事情があるんです

 時間は少し戻る。
 美冬がコンペに参加する前のことだ。

 槙野がCEOである片倉から、新しい企画に参加しないかと言われたのは園村ホールディングスの仕事を終えて、しばらくしてからのことだった。

 園村ホールディングスでは二年社長をして、その後一年は新社長への引継ぎ業務をしていた。

 この会社はホールディングス化するほどの企業でありながら、後継者がいないという問題があった会社だ。通常なら乗っ取りだ買取だと揉めそうな案件だが、創業者一族から株式の譲渡があった。

 そのため投資先企業に経営陣を送り込んでマネジメントを行ったり、取締役を派遣して実際に経営にかかわったりするハンズオンというスタイルをとっていたのだ。その取締役として出向していたのが槙野である。

 兼務しながらこちらでも仕事をしていたけれど、やはり、経営しながらの兼務は難しいし、先日引き渡しが終わった際は本当に一安心したものだ。

 今回は新たに投資する先をコンペで決めるということで『グローバル・キャピタル・パートナーズ』としても珍しい仕事の取り方であるし、業種も特定していないのがさらに面白いと思った。
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