契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 技術があっても売り方や、経験が圧倒的に不足しているという会社はいくらでもある。
 それが活性化していくのを見るのが槙野は好きなのだ。

 久々の企画会議に参加した槙野は新規の事業に胸を踊らせていた。会議室には片倉を始め、今回の企画を提案したメンバー、それから役員の姿も見える。

 槙野は手元の資料を確認した。
 ITやサステナブル関連など興味をひかれるような企業も多い。

 なかなかに興味深い会議を終えて、会議室を出てどの企画に参加しようかと考えていたところに、CEOである片倉から呼ばれたのだ。

「槙野にはこれをお願いしたいんだ」
 片倉からポン、と渡されたファイルを槙野は開いて確認する。

「アパレル……」
 正直に言えば縁はないし、興味もあまりひかれない。

「顔に出すぎだ」
 片倉にあきれたような表情をされた。

「俺がアパレル?」
「扱う商品は婦人服だ。さらに縁はないだろうな。まあでもやってみたらどうかな? 技術があってもうまく売れない会社というのはあるんだろう。ここはさほど業績は悪くないけれど、面白い会社だとは思う」
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