契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 片倉の感覚に関しては、槙野は絶対的な信頼を置いている。
 二人は『グローバル・キャピタル・パートナーズ』を立ち上げたときからのメンバーなのだ。

 そういえば……と今の企画部に数年前、アパレルに投資して相当に差益を得た担当者がいたということを槙野は思い出した。

 乗り気だろうが乗り気ではなかろうが、仕事がスタートしてしまえば頭が回転してしまう槙野なのだ。

 そんな槙野の後ろ姿をみて、片倉はくすりと笑った。
(結局好きなんだよな、仕事が)
 片倉はここは槙野に任せて大丈夫だろうと確信していた。

 槙野は副社長室に戻り、片倉から預かったファイルを自分のデスクに置いて、以前のデータを確認する。

 当時アパレルの案件を担当した担当者が分かったので、連絡してみた。
『グローバル・キャピタル・パートナーズ』の社風は割と役職や部署に関係なく部下からでも意見し合える感じだ。

 担当だったという池森はたまたま社内にいて、話を聞かせてくれるというので呼んで話を聞くことにした。
< 52 / 325 >

この作品をシェア

pagetop