契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
なるほど、確かにそんな話を聞くと面白い世界だと感じる。

「もしアパレル関連の仕事があるなら、エス・ケイ・アールの社長に連絡しますよ。ただ……」
「ただ……?」

「アグレッシブな社長です。いろいろ。でも槙野さんなら大丈夫かと思いますので」
 意味深なことを言ってへらりと笑った池森は曖昧に言葉をにごしていた。

「おい、何かあるなら言っておいてくれないか?」
「えーと、業務上は問題ないです」

「業務上は問題ないんだな?」
 そこはしっかり確認をしておかなくてはいけない。大事なことだ。

槙野に正面から見られて「絶対大丈夫です!」と返す池森である。

 槙野はその池森の言葉を信じて、社長の木崎と連絡を取ったのだ。

一度食事でもしながら内容を聞きたいというので、個室の会席料理を予約した。

 現れたのはがっつり化粧の濃い、香水と化粧品の匂いで料理の香りなぞは飛んでしまいそうな妙齢の女性だ。

全身をブランド物で包んでなかなかに押しの強そうな人物だった。

(なるほど、池森がアグレッシブだというわけだ)
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