契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 業務上は問題ないだと!?
 池森のあの時の意味深な様子に納得した槙野だ。

 ──アイツ池森っ!今度会ったら覚えていろ!!意識を失うな!失ったら詰む!

 槙野はぎゅううっと自分の太腿をつねりあげた。
 意識が覚醒するレベルでだ。もはや気合いである。

「木崎さん、そんな話は聞いていませんよ」
 槙野は顔を上げて、キッと木崎を睨んだ。

 普通の女性なら怯むところだがさすがに木崎はそんなものでは怯まない。

「あら……でもお付き合いしている方もいらっしゃらないとさっき聞いたわ」

 槙野は言葉に詰まる。
 先ほど根掘り葉掘りプライベートなことまで色々聞かれたのだ。

 槙野はちょっと小さい声でハッキリ言ってみた。
「将来を約束した人がいるんです」

 即座に木崎に返される。
「どこに?」

 ……どこにだろう……?

 いや!どこかにだっ!けど、申し訳ないがお宅のお嬢さんでは断じてない!
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