契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 企画書からは一生懸命な美冬の性格が見て取れた。
 槙野はそれ以外にも企業情報を事前に入手して確認しているのだ。

美冬は若いながらもしっかり社長としても責任を果たしていると思っていた。

 しかし今回はおそらくコンペの対象にはならない。
 それは美冬の経営がダメなのではなくて、コンペの意向と合わないからだ。

 実際にそういうことはよくあることで、その後もフォローできるようならフォローしてゆくケースもある。
 書類をすべて確認した槙野はそれをどうやって伝えようか考えていた。

「悪くはない」
 そう言ったのに、美冬はお前を殺すと言われたかのような顔をしていて、槙野はこいつ腹芸とかできないのか?とちょっとあきれたような声が出てしまう。

「だから、顔に出てるっつーの」
 本当ですか?顔に書いてありますか?どの辺ですか?と言いたげに一生懸命顔を触っている美冬は見ていて和む。

 コンペの時も今回企画書を持って来た時も、美冬はとても真剣で槙野のことが苦手でも、仕事のために話を聞くという態度はとても好ましい。
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