契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 だったらちょっとくらい殴ってもいいかな?
 豪快に笑う祖父にちょっと殺意が芽生えた美冬なのだ。

「じゃあ、なんでそんないつ死ぬとか言う話になったのよ」

「いや……この年齢ともなれば、正直何が起きても不思議じゃないということが入院して分かった」
 まあ、矍鑠(かくしゃく)とした祖父だが、世間的には年齢を重ねていることも間違いではない。

「そうだなー、引退も考えなくてはいけないな……」
「え!? それは……」

 さすがにそこまでは話が進むとは思わなくて、美冬は言葉を失くした。

「美冬が結婚してくれたらなー……」
 ──出た……。

 ここ1、2年の祖父の流行りだ。ここ1、2年で百回は聞いたと思う。
 いや、百回は盛った。三十回くらいだったかも知れない。
 とにかく、なかなかの頻度で聞くようになったのだ。

「えーとね、おじいちゃん、結婚するには相手が必要なのよ?」
「美冬は俺に似てイケメンだろうが」
< 7 / 325 >

この作品をシェア

pagetop