契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 おじいちゃん、それは男子に使う比喩でしょう。

「彼氏がいるならいつでも紹介していいんだぞ」
 むしろ紹介したい。いるなら。

「美冬……ミルヴェイユのことが好きか?」
「うん! 大好き!」
 好きかと聞かれれば即答できるくらい大好きだ。

「だったら、彼氏を連れてこい。このまま右肩下がりの経営は許されないぞ。経営状態を改善するか、彼氏を連れてきたら、社長にそのまま残すよう株主におじいちゃんが働きかけてやる」

 何!?突然のその訳の分からない天秤!!
「はあ!? そんなの横暴よ!」

「どこがだ? 経営できない社長を据えておくほどおじいちゃんは寛容じゃないぞ」
「私が会社を引き継いで2年よ。その前の業績不調までは私の責任じゃないでしょ」

 ミルヴェイユは業績不調ではない。経営状態は悪くはないのだ。ただ、緩く下がってきているだけで。
 だが、今の二人にはそんなことは関係なかった。

 美冬の反論にぐっと一瞬詰まった祖父だ。
 しかし祖父は真顔で美冬に言った。
< 8 / 325 >

この作品をシェア

pagetop