契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 腕時計を確認しながら、槙野は美冬にそう尋ねた。

 そうなのだ。槙野はとても忙しい人なのだ。
「いいの?」
「集中できないのに会社に戻っても仕方ない。ご馳走しますよ、お嬢さま」
 槙野が美冬を覗き込むその顔がいたずらっぽい。

 本当にもう、すぐ人をからかって!
 美冬は槙野に対して最初の時のような怖さは、もう今は全くなくなっていた。


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