契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 それにそんなものは叩くうちには入らなくて、むしろスキンシップに近い。

 こういうの、他ではやらせないようにしないといけないなと思う。
 相手が男なら誤解してもおかしくない。

 泊まっていくだろう?と聞いたら、美冬はとても戸惑っていた。

 けれど、当然のようにリードしたら、美冬は素直にありがとうと言ってバスルームに入ってゆく。

 今日、何度か美冬の口からありがとうという言葉を聞いた。

 美冬はそれをとても素直に口にする。
 そんなところもとても良いと槙野は思うのだ。

 しゃーっとシャワーの水音が聞こえてきて、シャンプーの香りがする。
 いつも自分が使っているもののはずなのに、美冬が使っているかと思うと、槙野は妙に鼓動が大きくなるのを抑えられない。

 それにバスルームから漂ってくる香りがいつもより良い香りのような気がするのだ。
 本当にいつもならこんなことはないのだが。

 それでもそんなことは一切出さずに、槙野は美冬の着替えを準備した。
 そしてバスルームをノックする。

「着替え、ここ置いとくから。しっかり温まって出てこいよ」
 そう言ったら、またありがとうと言われた。
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