契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 落ち着かない気持ちのまま、リビングのソファに座っていると、ふわん、と風呂上がりの温かさとボディソープの良い香りがする。

「お先でした」
「おう」
 そう言ってリビングの入口に槙野は目をやる。

──マジか……。ヤバすぎ。

 小柄な美冬では槙野の着替えは大きすぎて、意図的ではなかったはずなのに、その彼パジャマな状態が思いのほか可愛すぎたのだ。

 契約……。この関係は契約だ。
 だが、もう取り消すことはお互いにしない契約だ。
 そう槙野は心に強く言い聞かせる。

 はーっと槙野は大きく息を吐いた。
「槙野さん? どうしたの?」
 そう言ってリビングのソファに座っていた槙野の横に、美冬はちょんと座って首を傾げる。

 萌え袖をなんとかしろ。そして両手を膝の間に置いてこっちに身体を倒すな。谷間が丸見えなんだよ。
 いい匂いをさせて近づくんじゃないっ。
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