雨降り王子は、触りたい。
「びっくりしたぁ…」
「もー、絃〜」
隣ではのえるが目をまん丸にして、その奥では和佳がケラケラと笑っている。
何やってんの私…!
「ごめ…」
「大丈夫?」
倒れたままのグラスを起こしてくれたのは、市川だった。
「すみませーん、台拭き借りれますか?」
そのまま店員さんを呼んで、
「はい、スカートにはこれ使って」
自分のタオルを私に差し出す。
私がただ瞬きを繰り返しているだけの間に、市川はテキパキと対応をしてくれた。