雨降り王子は、触りたい。



自分が情けなくて、嫌になる。

ちょっとしたことで慌てて、やらかして。

思い返せば、三咲の秘密を知ったのも、ぼーっとしててぶつかってしまったのがきっかけだった。

それに、事情も知らずに突っ走って三咲の腕掴んだり、知ってからも不注意で触れてしまったり。



…迷惑かけてばっかりじゃん。

そっと、目線を上げると。



「…」



三咲は唇をムッと紡いで、空っぽになってしまった私のお冷グラスを見ていた。

……鈍臭い私に、呆れてるのかな。

その表情はひどく不機嫌なものに見えた。





「…で、さっきの話だけど。のえるちゃんって好きな人いるの?」



零したお冷が片付いたところで、杉山が照れたように頬を掻きながら口を開いた。


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