雨降り王子は、触りたい。



「え…帰んの?」



戸惑いつつも、言われた通り三咲にリュックを渡す杉山。

三咲は無言で頷いた。



「チカ、お金払っといて。明日返す。」



なんでそんな、いきなり…。

さすがに、私に呆れたからって理由ではないと思う。

だけど去り際に見えた三咲の横顔が、なんだか苦しそうで。



「…私も帰る!」



気が付けば私も、三咲の後を追うようにして店を飛び出していた。



店の外に出ると、まとわりつくような暑さが肌に触れる。

と、少し離れたところに三咲の背中を見つけた。


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