雨降り王子は、触りたい。



「…三咲!」



私は早歩きをする三咲に駆け寄る。

追いつくと三咲は、ふっと笑みを溢した。



「……相変わらず、足はっや」



…あれ。機嫌を損ねたってわけじゃないのかな?

去り際の苦しそうな表情は、見間違いだったのだろうか。
そう思ってしまうくらい、いつも通り綺麗な横顔がいつも通りの顔をして歩いている。



「みんなはまだ店?」

「うん」

「……空気壊してごめん。」



三咲が目を伏せるとまつ毛の長さが引き立って、王子って言われるだけあるなと、改めて思う。



「ううん。なんか市川が、留衣は気分屋さんなんだーとかなんとか、へらへら言ってたよ。」

「…………あそ」


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