雨降り王子は、触りたい。



それからは、ありきたりな会話を繰り返しながら足を進めた。

どうやら私と三咲は通学に同じ電車を利用しているようで。

駅までのこの道は毎日通るけれど、三咲が隣にいるとなんだかいつもと全く違う道のように感じた。



っていうか…ちゃんと警戒心持ってよ、三咲。
触れたらダメなんだから。

そんなことを思ってしまうくらいの、距離感。
道幅が狭いから、通った車を避けたら手が触れてしまいそうだ。

意識すると、なんだか恥ずかしくなって。
急に訪れた沈黙がとてつもなく居心地悪く感じて。



「そういや、突然店出たけどなんかあったの?」



慌てて口を開いたことを、すぐに後悔した。

…余計なこと聞いちゃったかも。


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