雨降り王子は、触りたい。
なんで…そんな普通なの?
昨日のあれはなんだったの?
ぽかん、と口を開けたまま動きが止まる。
目の前に立っているのはやっぱり、いつも通りの仏頂面をした三咲だ。
その佇まいが本当にいつも通りすぎて…昨日の帰り際の出来事が錯覚だったのかとさえ思えてくる。
「あー…席替えしたんだね、三咲のクラス。」
「うん。………っていうか、その、昨日…」
「絃ちゃーん」
三咲が何かを言おうとしたような気がしたけれど、それはチャラ男の声によって遮られた。
背後から現れた市川は、ぽんと私の肩に手を置く。
「ひどいよねー絃ちゃん。メッセージ無視するなんて」