雨降り王子は、触りたい。
三咲らしき人影は、意外にも俊敏にくるくると動き回っている。
体が細いから人と競り合うと少しハラハラするけれど、上手くドリブルして突き進んでいく。
いけ、がんばれ!
応援の声は心の中で留めてはいるものの、私はいつの間にか手に汗を握っていた。
なんとか辿り着いたゴール前。
三咲はシュートではなく、杉山にパス。
見事に杉山はゴールを決めた。
「よし!!!…あ。」
思わず声が出て、口を押さえた。
…は、はずかし!
私はゆっくりとテニスコートの方を向き直すと、パタパタとTシャツを仰ぐ。