雨降り王子は、触りたい。



「ナイス、留衣!」



ゴール前で銀太にパスを出した。
すると想像通り、銀太は鋭いシュートを決めてくれる。

キーパーは一歩も動けていない。

気持ちいい。



銀太が肩を組んできたけれど、やっぱり暑苦しいのですぐにすり抜ける。



俺は直接ゴールを決めるのは苦手だ。

自信がないから。

外すのが怖くて思い切り蹴ることができない。



サッカー以外でも、そんな感じ。

いつでも逃げ腰。

すぐに引き返せるように。

だから銀太が羨ましい。

前向きなところ、いつも全力なところ、まっすぐ突き進むところ。



グラウンドの奥には、フェンスを挟んでテニスコートがある。

ふと、そこにもたれ掛かっている赤髪が目に付いた。



ほんと、目立つ髪色。

だからすぐに見つけてしまうんだ。


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