雨降り王子は、触りたい。







体育が終わり、外にある水飲み場にやってきた。

グラウンド近くにあるウォータークーラーは大抵並ぶから、私はいつもここへ来る。
案の定今日も、ここには誰の姿もなく静かだ。

蛇口を捻り喉を潤す。

テニス、楽しかったな。
のえるの打ち返した球、ラケットを振った方向と真逆に飛ぶし、ラインギリギリに入るし、意外と手強くてほんと笑った。



「ふっ」



思い出し笑いを漏らす。

そして緩んだ口元をタオルで拭っていると。



「お疲れ〜絃ちゃん」



静かな空間にゆるりと響いた声。



「…市川。」



現れたのは、体操服を着ていることに違和感のあるチャラ男だった。


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