雨降り王子は、触りたい。
思いがけない質問が飛んできて、私はパチパチと瞬きを繰り返す。
なんでって…
そして私が答えを出す前に、市川はにっこり笑って口を開いた。
「留衣に嫉妬させたくて。」
…嫉妬?
混乱したままの私に構うことなく、市川は言葉を紡いでいく。
「昨日手を握ったのも、いつも距離が近いのだってそう。」
じりじり、さらに距離を詰めてくる市川を、私はただ目に写す。
市川の顔からはいつの間にか笑顔が消えている。
「前に言ったでしょ、体質なおしてやってくれない?って。」
ぽたり。
背後で、蛇口から水滴が落ちる音が響いた。
「多分、これが近道。協力してくれる?」