雨降り王子は、触りたい。
抜け出そうと抵抗するけれど、私に絡み付く市川の腕の力は相当なものだった。
力に自信はあるけれど、振り解けない。
「なん、」
「しー。」
なんでこんなことをするのか。
理由を聞こうとしただけなのに、それも市川によって絶たれる。
「これも作戦だから。」
耳元で聞こえる声。
尋常じゃないくらい近い距離をまざまざと感じて、私の身体はカッと熱くなった。
…だけど、こんなんに屈するか!
ドンッ!!!
渾身の力を振り絞って、私は市川の胸を両手で押した。
ようやく市川の熱から解放されると、荒れた呼吸を落ち着かせる。