雨降り王子は、触りたい。
私は後ろを振り向くことができず、視線を地面に落とす。
「体育疲れたかなって、労り?」
そう言った市川からは何の動揺も感じられない。
ザッザッザッと、砂が擦れる音がする。
その音は徐々に近づいてきて、三咲が私の横を通り過ぎた。
「さすがチカ。可愛くない女にも優しいのな。」
冷め切った目をこちらに向けて、吐き捨てられた言葉。
それはいとも簡単に私の心臓をズキンと捻り上げた。
三咲は市川の横も通り過ぎて、去っていく。
可愛くない女、なんてそんな言葉に傷付いてるんじゃない。
そんなことはいつも言われ慣れてる。
…見られたくなかった。あんなところ。
市川に抱きしめられてるところなんて、見られたくなかった。