雨降り王子は、触りたい。
『留衣に嫉妬させたくて。』
────あの日、この男はそう言った。
それが一体、どういう意味だったのかはわからない。
だけど正直、そんなことはどうだってよかった。
気になることはただひとつ。
なんで三咲は私のこと避けるんだろう。
私、何かした…?
「…たしかに、久しぶり。」
そう言うと、私は重い腰を上げた。
そしてなんとなく三咲を視界に入れるのが怖くて、視線は手の中にあるサイダーに向ける。
「のえるちゃん、連絡返してよっ」
「な、き、昨日は返したじゃんかぁ…」
隣からのえると杉山の会話が聞こえてくるけれど、市川はそんなことを気に留めることなくこちらに話しかけてくる。