雨降り王子は、触りたい。
目的地まで何も言葉を交わすことなく、ただひたすらに走って。
駅前のコンビニの前で、私はようやく三咲の手を離した。
繋がっていた手にはまだ三咲の熱が残っている。
「はぁー…疲れた」
深く息を吐いて、乱れる心臓を落ち着かせようとするけれど、どうにもうるさいままだ。
ハレロハレルヤソラソラルン……!
心の中で唱えるけれど。
やっぱり、効果なし。
最近はなぜだかこの呪文の効果が激減してしまった気がする。
「………ごめん」
三咲の言葉が、顔に押し付けるタオルに吸収される。
おそらく涙を拭っているんだと思う。
反対の手には外したメガネが握られている。