雨降り王子は、触りたい。



店内はクーラーが効いていて、汗が一気に冷えて寒い。

水を手に取るとそれは三咲に奪い取られ、それが私の手元に戻ってきたのは会計を済ませた後だった。



「ありがとう…」



水を受け取る時、私の目は無意識に三咲の手を追っていた。

綺麗な指。この手を、私……

またドキッと心臓が響く。



何も言わずに店内のイートインスペースに座った三咲の隣に、私も腰を落とした。

すると三咲は大きな溜息を吐き、重りを持ち上げるようにゆっくりと口を開く。



「………忘れてくれ。」



そんな三咲の手には激甘カフェオレ。

1日分…いや1週間分くらいの糖分をパンケーキによって摂取してしまった私には、"生クリーム増量!"なんて字すらしんどい。


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