雨降り王子は、触りたい。
それにしても、"忘れてくれ"なんて。
「あ、うん。……………いや、無理かもごめん。」
きっと三咲の言う忘れてほしいことは、涙目で私に助けを求めたことで。
私は一旦頷いたものの、すぐに撤回した。
「……ですよね。」
三咲はよほど後悔しているのか、決まりの悪い顔を浮かべている。
だけど忘れられるわけない。あんな出来事。
不謹慎かもしれないけれど、少し嬉しかったんだ、私。
初めて頼ってもらえた気がしたから。