雨降り王子は、触りたい。
文化祭準備で賑わう校内を歩き進める。
流れる景色が普段より俄然カラフルだ。
だけど楽しみにしておきたいから、あまり周りを見ないでおこう。
私はまっすぐ前を向き直す。
「…それで絃、結局人魚姫ドレス着るんだよねぇ。和佳と2人でゴリ押しした甲斐あったねぇ〜」
のえるはむふふ、と段ボールの影で笑った。
……そう。
私の衣装はなんと、まるでディズニーに出てくるプリンセスのような、主役級に綺麗なドレスになってしまったんだ。
それもこれも、この2人が私の髪色を見て目を光らせたのがきっかけだった。
ディズニーの某人魚姫に赤髪がそっくりとか、なんとか。
「ぜーったい似合う!超楽しみ!!」
「……はぁ」
唯一気が重いことといえば、それだ。
主役級ドレスなんて柄じゃないのに、なんでこんなことになってしまったんだろう。