雨降り王子は、触りたい。
「お礼とお詫び。お姉さん大変だね?」
そう言った男はジリジリと距離を詰めてきて、私の両腕を拘束した。
背中は壁にピッタリとついていて、もう逃げ場はない。
もうダメだ……
私はギュッと力いっぱい目を瞑った。
…あぁ。相手が三咲だったら嫌じゃないのに。
ツンと尖った鼻先、控えめで血色のいい唇、白くて透けそうな肌。
茶色のようなグレーのような、不思議な色の瞳。
今目の前にいるのは、純粋な心を表すような外見の三咲とは似ても似つかない、濁った目をした男。
そんな最低男との距離が縮まっていくのを感じて、息を止める。
………助けて、三咲…っ
男から顔を逸らした、その時。