雨降り王子は、触りたい。
「そっちこそ、なんだよ」
舌打ちと同時に、男は吐き捨てた。
それに対して三咲は呆れたように、返す。
「たまたま通りがかっただけですけど。」
「じゃあ口出ししないでくれる?」
「怪しいことしてる人見かけてしまったんで、つい。」
「怪しいことしてる人って、」
三咲とのやり取りに、男は気を取られているようで。
「まさか俺のこと?」
そう言って三咲を睨みつけた男は、ついに私の手は解放した。
よし……!
私はそっと壁と男の間から抜け出すと、足元のハサミを拾い上げる。
そして熱くなっている男から距離を取って。
「あんたしかいないでしょ!」
男に向けて、ハサミを突き出した。