雨降り王子は、触りたい。
◇
「失礼しました」
パタンと職員室のドアを閉める。
担当の先生は不在で、全部の欄を埋めた課題プリントは先生の机の上に置いておいた。
相変わらず誰もいない廊下。
静かなその空間をぼーっと歩けば、やっぱり先程の出来事が思い浮かんでくる。
"────じわっ…ぽとり。"
いや、きっとこの廊下が昼休みのように騒がしくたって、私は三咲のことを考えていただろう。
『…誰にも言うなよ』
そう言った声は、三咲のものとは思えないくらい、弱々しいものだった。