雨降り王子は、触りたい。







「失礼しました」



パタンと職員室のドアを閉める。

担当の先生は不在で、全部の欄を埋めた課題プリントは先生の机の上に置いておいた。



相変わらず誰もいない廊下。

静かなその空間をぼーっと歩けば、やっぱり先程の出来事が思い浮かんでくる。


"────じわっ…ぽとり。"


いや、きっとこの廊下が昼休みのように騒がしくたって、私は三咲のことを考えていただろう。


『…誰にも言うなよ』


そう言った声は、三咲のものとは思えないくらい、弱々しいものだった。


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