雨降り王子は、触りたい。


しばらく沈黙が続いて。

その間ずっと、私はヘアクリップを眺めていた。



「はぁー…」



静寂を破ったのは、三咲の大きなため息だった。



「まじ疲れた。なんか俺らって走ってばっかじゃない?」

「…たしかに」



言われてみれば。

クラスの女子が言い出した三咲への悪ノリを阻止した時も、三咲が合コンに参加して助けを求めてきた時も。

私たちは、一緒に走った。

2人で走るたびに私の気持ちは加速している気がする。



「私……さ、」



加速して、加速して、もう絶対止まることのないこの気持ち。

素直になるのは、難しい。

一歩を踏み出すのはもっともっと、難しい。

だけど────三咲の傍にいたいから。

少しずつでも…素直になりたい。



「三咲のこともっと知りたい」


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