雨降り王子は、触りたい。



『ごめん、帰る』

先程の光景が頭に浮かぶと、胸がザワザワして息が詰まりそうになる。



ふらり、椅子に座った時だった。

ブー…

リュックでスマホが震えたのを感じた。

すぐさま取り出すと、そこには三咲からメッセージが届いていて。



【いきなり帰ってごめん】



ごくりと息を呑み、返信を打とうとキーボードに指を当てる。

……なんて返信したらいいんだろう。



聞きたいことはたくさんある。

だけど、簡単に聞いていいことなのかな…?

なんだか少し踏み込んではいけないことのような気がして、文字を打つことを躊躇っていると。


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